オーバークロック概要
(質問) オーバークロックとは?
(答え) 定格を超えたクロックでプロセッサを稼働させることです。
定格とは、機器の製造者が保証する動作の限度のことで、保障動作の限度値となります。
通常、インテル プロセッサーは、工場の定格設定で稼働している状態でのみ検証、保証されています。
設計以上の速度でプロセッサーを動作させることをオーバークロックと呼びます。
プロセッサの動作周波数(クロック)は、以下のような式で決定されます。
動作周波数(クロック) = ベースクロック(BCLK) x クロック倍率
オーバークロックでの動作周波数を上げるには、上記に示すように (1)ベースクロックを引き上げるか、(2)クロック倍率を大きな数値に設定することになります。
ベースクロックでのオーバークロックの場合には、メモリなど他のクロックへの影響や、各コントローラーへの負荷の増大など
様々な影響が出てくる可能性があります。(デフォルト値は、100MHz)
倍率変更によるオーバークロックでは、メモリなど他のクロックへの影響や、各コントローラーへの負荷の増大はありませんが、
プロセッサモデル毎にその最大倍率が設定されています。ただ、この最大倍率で、システムを長時間安定させることは難しいため、安定稼働出来るクロック倍率でのオーバークロックが一般的です。
KRONOS/ORION HFシリーズでは、機種とモデルに応じて、クロック倍率でのオーバークロックとベースクロック(BCLK) でのオーバークロックを使い分けて製品化を行っています。
オーバークロック支援ツールとモニター
CPU-Z Core i9-13900KF
「CPU-Z」いうCPUの情報を調べるソフトウエアでCore i9 13900KFを調べると図(クリックで拡大します)のようになります。ここでの Core Speedの値 5500.00MHzが動作周波数(クロック)になります。Bus Speedは、100.00MHzで、これがベースクロック(BCLK) で、Multiplierの55.0がクロック倍率になります。
主要なハードウェアコンポーネント、例えばプロセッサ(CPU)、マザーボード、メモリ(RAM)、グラフィックカード、ストレージデバイスなどの詳細情報をリアルタイムで提供します。これには、各コンポーネントのモデル名、製造元、クロック速度、キャッシュサイズ、電圧などの技術的なパラメータが含まれます。
さらに、CPU-Zはセンサー情報を利用して、温度、電圧、ファン速度などのリアルタイムハードウェアモニタリングもサポートしています。これにより、ユーザーはシステムの安定性とパフォーマンスを最適に保つために、これらの要素を細かく監視することが可能です。
このソフトウェアは、システムのスペックを迅速に確認し、ハードウェアの詳細を調査する必要があるすべてのユーザーにとって、非常に価値のあるリソースです。
インテル エクストリーム・チューニング・ユーティリティー (インテル XTU) を使用した Windows でのオーバークロック
長らくオーバークロックは、BIOS(Basic Input Output System)を利用して手動でオペレーティング・システムをロードする必要がありました。現在でもこの方法は有効ですが、インテルは、Windowsで直接、効率的にオーバークロックを行えるソフトウェアソリューションを提供しています。
インテル エクストリーム・チューニング・ユーティリティー(インテル XTU)は、そのソリューションの一部です。ユーザーフレンドリーなインターフェースと広範なマザーボードブランドおよびモデルのサポートにより、オーバークロック作業が大幅に簡略化されます。これにより、ユーザーはBIOSに直接触れることなく、安全かつ効率的にシステムのパフォーマンスを最大化することができます。
ターボブーストとオーバークロックとの違い
オーバークロックによる全コア同時クロックアップ
プロセッサは自動でクロック倍率を変更する機能を持っています。この機能をターボブーストと呼ばれていますが、この標準のクロック倍率アップの機能とオーバークロックの違いは以下のようになります。
ターボブーストとオーバークロックとの違い
ターボブースト時の全コアの動作状況 |
オーバークロック時の全コアの動作状況 |
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- プロセッサコアに高負荷がかかった場合、「自動」で一時的に一定枠内までクロック数をアップ
- プロセッサにクロックアップの余裕がある場合のみ
- プロセッサごとに設定された上限以上は上がらない
- アップするクロック数などをユーザが指定することは出来ない
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- ターボブーストで設定された上限値以上に、全プロセッサコアの動作クロックをアップ
- 動作周波数は、ユーザが設定することが可能
- 消費電力や発熱の増加、信頼性・安定性の低下のリスクがあり、それらの克服が課題
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オーバークロック動作例(Windowsモニターツール)
AMD Ryzen Threadripper 3970X / Core i9-9980XE オーバークロック
全コアに負荷を掛けた際のCPUコアの動作クロックを表示 (全コア)
Windows 10 タスクマネージャ「パフォーマンス」タブ
Xeon W7-2495X オーバークロック
LINPACKベンチマークを全コアで実行している際のCPUコアの動作クロックを表示 (全コア)
Windows 11 タスクマネージャ「パフォーマンス」タブ
メモリクロックのオーバークロック
メモリもオーバークロック対応が可能であり、メモリのオーバークロックによって、より高速なメモリアクセスが可能になります。 メモリモジュールもベースクロックとクロック倍率の設定があり、これらを変更することで、より高速なメモリアクセスが可能になります。このメモリのオーバークロックは、プロセッサのオーバークロックとは、独立にその設定が可能ですが、システムの安定稼働のためには、メモリとプロセッサのオーバークロックは密接に関係しています。 KRONOS/ORION HFシリーズでは、クロック倍率でのオーバークロックを行っています。
KRONOSシリーズでのメモリ性能例 / Stream ベンチマーク / TRIAD (MB/S)
評価システム一覧
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KRONOS S810 |
KRONOS 840-G3 |
E5-2630v3搭載サーバ |
プロセッサ |
Core i7-3960X |
Core i7-5960X |
Xeon E5-2690v3 |
プロセッサコア数 |
6コア |
8コア |
2x8コア |
プロセッサ速度 |
4.8GHz |
4.5GHz |
2.4GHz |
メモリ構成 |
4チャンネルDDR3メモリ |
4チャンネルDDR4メモリ |
4チャンネルDDR4メモリ |
メモリ速度 |
2133MHz |
2666MHz |
2133MHz |
STREAMベンチマークは、広く使用されているパフォーマンスベンチマーク基準の1つで、コンピュータシステムの持続的なメモリバンド幅を測定するものです。アプリケーションが高い実行性能を発揮するには、プロセッサとメモリ・サブシステム間の適切なバランスが必要不可欠となります。
KRONOS S810でのメモリ性能は、特にシングルコアで比較した場合、その性能比が圧倒的です。また、複数のプロセッサコアを利用して、ソケット単位でのメモリバンド幅を評価しても、通常サーバよりも高い性能を示しています。
KRONOSは、プロセッサだけでなく、メモリシステムもオーバークロックが可能なシステムであり、また、プロセッサとメモリは独立にオーバークロックの比率を調整可能です。ワークロードに合わせたCPUとメモリのオーバークロックの調整も可能となります。
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